サラリと考えないで!深掘りしましょう「ベネフィット」。
ビジネスシーン、マーケティングシーンの中でよく聞く「ベネフィット」。
事業活動において、大変、重要なキーワードです。
benefit/ベネフィット、英和辞典での直訳は、「利益。恩恵。」となります。
特にマーケティングを考えるときベネフィットは大変重要なキーワードです。
よく似た意味のmerit/メリットと同義であると勘違いされてしまうことも多いようです。
merit/メリットを英和辞典で見てみると、「価値。利点。功績。長所。真価。」などの意味があります。
ビジネスシーンではよく同意語として解釈されがちですが、特にマーケティング上では、正確に言えば、その解釈、定義は微妙に違います。
中小企業のマーケティング施策を考える場合において、ベネフィットを考えるときには、メリットという言葉をあまり意識しない方が理解し易いと思います。
また、使われるビジネスシーンやジャンルによっても、ベネフィットの意味や定義も微妙に違ってきます。
本編では、マーケティングの視点から見たベネフィットについて解説していきます。
自社商品やサービスのベネフィットを検証、分析する場合、サラリと検証、分析してはいけません。
可能な限り具体的に、明確に、ロジカルに深掘りすることが、中小企業のマーケティング施策においては特に、重要な課題となります。
ベネフィットを深掘りしていくことで、自社の商品、サービスの本質が見えてきます。
また、様々なメッセージ考案、施策構築等においても貴重な指針となる要素でもあります。
更に、その情報、及び、要素は、USPへの取り組みの際にも大変、参考となる、必要な情報にもなります。
マーケティング施策上、理解すべき「ベネフィット」の定義と深掘りしていくための3つのポイントなどを解説していきます。
コンテンツ
「商品を購入する」こと。そもそも “ 商品 ” とは何?
人は何故、商品を購入するのか。
ニーズとウォンツについても解説すべきかと思いますが、それはまたの機会に解説します。
さて、敢えて難しく定義してみると、人は、何かの悩みや問題、課題を抱えた時、感じた時、求める理想と現状とのギャップを感じています。
人はギャップを感じれば、そのギャップを埋めたいと思います。
ギャップを埋めるために、その商品が有効であると認識した時、その商品を購入したいと思います。
この欲求をニーズやウォンツとも言います。
すなわち商品を購入することによって、自分が理想とする状態が手に入れられる、精神的な満足感が得られる。
商品を購入することによって得られる、より良い未来。
そのより良い未来像を「ベネフィット」と言います。
つまり、“ ベネフィットを手に入れる事が、商品を購入する。” と言う事。
“ ベネフィットを手に入れる為に、商品を購入している。” と言う事。
「商品を購入する事は、より良い未来を購入している。」と言う事ですね。
直訳的に言えば、「商品がもたらす “ 恩恵 “ また、その期待を購入している。」とも解釈できます。
よく例題として出される「ドリルを購入する人が〜〜〜。」と挙げられる例文がお馴染みだと思います。
ベネフィットから見る、2つの商品。
より良い未来「ベネフィット」を購入する商品は、そのベネフィットによって、大きく2つの種類に分けられます。
商品を購入しようとしている人の課題や問題点の位置、状況によって商品の種類が大きく2つに分けられます。
一つは、その購入者の現状が負の状態にある場合、マイナスの課題や問題点の場合は、負の状態から、(+)プラスの状態に持っていくための商品となります。
どちらかと言えば、こちらが「ニーズ」に当たる商品が多いかもしれませんね。
二つ目は、現状は問題点と言う程ではないが(+)の状態にあるが、更に良い状態にしたいと言う欲求、より便利にしたいと言う欲求を満たすための(+)の状態から(+・+)の状態に持っていくための商品と言う2種類の商品があります。
こちらは「ウォンツ」に当たる商品が多いかもしれませんね。
これは、商品そのものが2種類の目的とベネフィットを持つ商品である場合もあります。
商品の購入者のいるポジションが、負のポジションかプラスのポジションのどちらにいるかでも同じ商品が2種類に分けられることもあると言うことです。
つまり、同じ商品でもその人によってベネフィットは変わることもある、と言う事でもあります。
見方を変えれば、商品を購入する人、お客さんが決まらなければベネフィットは決まらないと言う事でもあります。
自社の商品、サービスのベネフィットを分析、明文化し、設定する場合には、必ずその販売対象、ターゲットを明確にしなければ適切なベネフィットの設定ができないと言うことでもあります。
自社のベネフィット設定。3つの分析、F・A・B。
マーケティング施策、コミュニケーション施策において、商品に対するベネフィットをメッセージする事は重要なテーマとなります。
その商品の特徴やメリットをメッセージしても実際はイマイチ、ピンときていないのが実態でしょう。
そこで、自社の商品やサービスに対するベネフィットのメッセージを構築するために利用する、3つの要素で構成される分析理論があります。
FAB理論、〜分析、〜フォーミュラがあります。
私が修学した時は、提唱者や引用元がわかりませんでしたが、
提唱者は世界的なダイレクト・レスポンス・コピーライターであるマイケル・フォーティン氏、とか、米国3M社において1980年代に提唱されてとありますが、自身での確認は取れていません。
恐縮です。知識情報としてご理解ください。
若しくは、
FABE分析とか、 FAMB分析とかも言われます。
Feature / 「特 徴」 : 機能、性能、成分、価格等。
“ 商品、サービスに関する事実 ”
Advantage / 「利 点」 : 効果、効能。
“ 一般的な解決イメージ ”
※「優位性」と言う意味もあるがマーケティング上、優位性という解釈は相応しくありません。
Benefit / 「(ユーザーの)欲しい未来」:個々によって変わる場合も有。
頭文字をとって、FAB分析とか、〜理論、〜フォーミュラと呼ばれています。
その他に、Evidence /「証拠」、Motive /「動機」を組み合わせる上記の様な分析理論もあります。
先ずは、FAB分析として理解しておけば良いかと思います。
同じFとA、特徴と利点を持つ商品でも、購入者、お客さん個々によって、その欲しい未来、B、ベネフィットは変わります。
また、お客さん自身が自身のベネフィットを潜在的に感じ取ってはいるが、明確な意識として感じていない場合もありますので、それを意識したメッセージの策定方法、発信の仕方が必要となります。
コミュニケーション施策において、多くの場合、広告のメッセージとしてベネフィットが的確に描写されず、FとA、特徴と利点のメッセージで終わってしまっている事も多い様です。
商品を販売するためには、明確で適切なベネフィットを描写してイマジネーションを広げてもらえるようなメッセージを制作しなければなりません。
そのメッセージがより突き刺さるメッセージにするためには、お客さん、そのターゲットをより明確にしなければ、適切なベネフィットは設定できません。
そのターゲットの設定、ターゲティングは、FAB理論を用いて分析し掘り下げて、ベネフィットを設定するためにも大変、重要な要素となります。
自社の商品、サービスを購入して頂く理想の顧客像、理想のターゲット、昨今では、STP理論を用いたターゲティングではなく、より細かく、より具体的な、より個別な特徴を持ったターゲットを設計する対象を「ペルソナ」と言います。
詳しくは別で解説します。
多視点で分析、F・A・B。
F・A・Bを明確にしなければ商品は売れないと言われる程に、F・A・Bを適切に分析、自社商品、サービスの定義付けしなければなりません。
例えば、
「この商品○○○のF/特徴は“☐☐☐” です。
その為、A/利点は“△△△” です。
従って☆☆☆(対象・ターゲット)にとっての
B/ベネフィットは、◎◎◎◎◎です。」
このような例文をベースに分析してみると分かり易くなります。
実際にFAB分析に取り組んでいると、商品によっては、Fの特徴とAの利点の要素が重なる部分も出てくることもあります。
重なる部分の解釈は個々のケースと設定するターゲットによっても変わってきますので、その解釈はその時点で他の要素を踏まえて判断すべきでしょう。
先ずは、あるターゲット①で、FとAで分析して設定できたB/ベネフィットを検証してみましょう。
また、同じFとAで別のターゲット②を想定したもう一つのB ” /違うベネフィットも分析、検証してみましょう。
ベネフィットを別の視点からも深掘り、分析していくことで、新しい顧客イメージを発見できる可能性もあります。
こういう目線も持ち合わせることも重要なテーマです。
また、目線を変えてみて、ニーズとウォンツからも、FとA、そして、B/ベネフィットを分析してみることでも、本質的なベネフィットの見極めにつながることもあります。
それだけでなく、新しい商品開発を手掛けたりする時にも有効な分析、検証の手法の一つにもなります。
例えば、ゴルフ好きの私の例でFABを分析してみると、
今、私はM’zのドライバーが欲しいです。
現在所有しているドライバーは、H’mのドライバーで方向性もまずまず、飛距離もまずまずですが、M’zのドライバーが欲しくなっています。
たまたま寄った行きつけのゴルフショップで、その新商品のドライバーを試し撃ちした時、衝撃を受けました。
ヘッドの形が私好みの大変美しい、構えた時にも惚れ惚れする程、しっくりきました。
実際に打ってみると予想以上に打ち易く、データ上でも、飛距離も今、所有しているH’mのドライバーよりも飛んで、曲がっていないじゃないか!!って、欲し〜い!!
この場合の分析、その商品のポジションは、特に今、所有しているドライバーも満足度は高いので私の欲求の位置は(+)の状態ですね。
そして、F/特徴は、ヘッドのデザインが美しい、格好良い。
A/利点は構えた時しっくりくるし、プロモデルなのに思いの外打ち易いし、今よりも良く飛んで曲がらない。
私にとってのB/ベネフィットは、仲のいいゴルフ仲間から虚栄心を満たしてくれる。自慢できる。仲間内で一番、飛ばせるかもしれない、しかも、OBを出さずに。
この場合のベネフィットは、所有欲を満たすだけでなく、ここ一発の爽快感とゴルフ仲間に対する虚栄心を満たせると言うことですかね。(笑笑)
よって、(+)の状態から(+・+)の状態に持っていく商品となります。
所有欲は敢えてベネフィットと考えることはしなくても良いです。
似たようなケースで別のターゲットの場合で考えてみましょう。
○○さんは、まだコースデビューして数年の女性・ビギナーゴルファーです。
セットでバリューな入門用クラブでゴルフの練習に励みコースデビュー、最近、ゴルフにはまってしまった女性ゴルファーです。
でも、技術も上がってきてドライバーは、曲がるし、思ったよりあまり飛んでいない。流行りの著名ドライバーを欲しがっています。
この○○さんは、負の(−)の状態ですね。負の状態から(+)の状態に持っていく商品というポジションですね。
そして、F/特徴は、○○さん自身の技量にあったドライバーです。
A/利点は今よりも良く飛んで曲がらない。
○○さんにとってのB/ベネフィットは、自分の技量にあったイメージのドライバーショットが可能になり、ゴルフのもう一つの楽しみが味わえることになります。少しだけスコアアップにもつながりますかね。(笑)
帰って分かりにくかったですか?ね。(笑)
プレゼンのストーリー展開にも活かせる、F・A・B。
余談ですが、このFAB分析、〜理論は、プレゼンテーションのストーリー構築のプロセスとしての活用にも有効です。
分かり易く、端的に伝えるストーリー手法としても取り入れても有効なテクニックの一つです。
例えば、営業活動の場面で、
B⇒F⇒A⇒B⇒Eの順でプレゼンテーション・ストーリーを考えてみてください。
先ずはベネフィットを伝え、次に特徴や機能、性能、成分などを伝えます。
そして、利点や効果、効能を説明して、もう一度、ベネフィットを伝えます。このベネフィットは目線を少し変えた要素も踏まえても良いと思います。
最後にエビデンス、それらを裏付ける証拠などで補足する。
データなどを使用できれば、尚、説得性が高いものとなるでしょう。
余談ですが。
しかし、ベネフィットに対するメッセージを策定する場合でも活かせる考え方でもあります。
まとめ
マーケティング施策を講じる上で的確に適切に分析、検証しなければならないのが、ベネフィットです。
自社の商品、サービスのマーケティング施策、販売施策を講じる上で、とかく、その商品の特徴や機能、性能や効果、効能の利点ばかりに視点が行きがちになります。
それをメッセージとしても消費者、ユーザーは動きません。
ベネフィットを明確にメッセージすることで初めて共感が生まれてきます。
自社の持つ商品、サービスの本質をロジカルに分析してみて、的確な商品、サービスの持つ意義、ベネフィットを関係者全員が共通の認識、理解としなければなりません。
分析、検証して的確で適切なベネフィットを設定するためには、可能な限り具体的なターゲット、ペルソナを設定しなければなりません。
そして、それらの商品を構成する本質的なFABを分析して、適切なベネフィットのメッセージを構築することは最も重要なテーマ、課題であります。
メッセージの構築のためのUSP施策に対しても必要な作業でもあります。
FABを明確にしなければ商品は売れません。
ニーズが既に顕在化している商品であれば、FAをメッセージすれば売れるかもしれません。
しかし、ものが溢れている現代、広告に対する拒否反応を示してしまう消費者環境もあります。
FABを明確にロジカルに設定して、的確で適切なマーケティング施策とコミュニケーション施策を施さなければ商品は売れていきません。
全てのマーケティング施策における、基本の作業であります。
サラリと分析せず、これ以上ないくらいに深掘りして、色々な目線、視点を持って分析、検証していきましょう。
自社の商品、サービスに対して、新しい発見があるはずです。
2020.09
この記事を書いた人
- 古野 徹
- 株式会社リップル
代表取締役
マーケティング・コンサルタント
広告関連企業8社に従事して36年超。
ありとあらゆる業務を経験してきたノウハウを活かし、総合広告代理店、㈱リップルを設立する。
創業15周年の通過点に向けて、新規事業として、中小企業を対象とした、「マーケティングに関するコンサルティング事業」サービスの提供を開業。
「心を大切にコンサルティングします。」を新たな基本理念に加え、
どうやって、集客していくのか、
どうやって、売り上げを伸ばしていくのか、
どうやって、新たなお客さんやサプライヤーと繋がっていくのか、
どうやって、人財を確保していくのか、
どうやって、災害や緊急事態に対応していくのか、等々、
益々、社会での存在意義を示していくことが重要な課題になってきている中小企業に対して、わかっているようで、わかっていない「マーケティング」、今更、聞くに聞けない「マーケティング」の事など、総合的なマーケティング活動の施策支援のサービスが提供できるように、絶えず精進を続けている。
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